<?xml version="1.0" encoding="UTF-8" ?>
<rss version="2.0" xmlns:blogChannel="http://backend.userland.com/blogChannelModule" >
  <channel>
  <title>白銀の翼</title>
  <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/</link>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="self" type="application/rss+xml" href="http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/RSS/" />
  <description>しろがね　つばさ</description>
  <lastBuildDate>Thu, 09 Sep 2010 03:24:39 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
  <atom10:link xmlns:atom10="http://www.w3.org/2005/Atom" rel="hub" href="http://pubsubhubbub.appspot.com/" />

    <item>
    <title>１１</title>
    <description>
    <![CDATA[　新しい店は、やはり高耶の好みにぴったりとはまったらしい。<br />
　オープンして間もないということで、たまたま親しくしているその店のオーナーも詰めており、直江も久しぶりに挨拶をすることができた。<br />
　たらふく食べて店を出る前に、遅くなってしまったからと高耶が家に電話を入れると、なんと譲が出た。<br />
　何も言わずに学校から消えた高耶は、行方不明扱いになっていたらしい。<br />
　怒る譲の後ろにあきれた声をだす千秋までいる。<br />
　心配させた侘びということで、直江はオーナーに頼んで譲と美弥に（千秋には無いらしい）お土産を包むことにした。<br />
<br />
<br />
「げ、また降って来やがった」<br />
　店を出ると、大粒の雪が降り出していて、すでにうっすらと積もり始めていた。<br />
「本当ですね、傘を借りてきましょうか？」<br />
　駐車場までは少し距離がある。店に予備の傘くらいはあるはずだ。<br />
「こんくらい平気だろ。それより明日もまたバイク乗れね<span class="line">──</span>うわっと！！」<br />
　高耶の足がつるりと滑った。慌てて直江の手が出る。<br />
「あ、わりい」<br />
「いいえ」<br />
　腕を掴むのではなく腰ごと抱え込んだところに自分の疾しさが現れてしまった、と思った。<br />
　下心を悟られたのではないかと高耶をちらりと横目でみるが、さして何かを気にしている様子はない。<br />
「飛行機はもう着いたかなー」<br />
　高耶は、たぶん食事の間もずっと気にしていたであろうことを口にした。<br />
「きっと今頃、ご友人の夢枕にでも立って昔話に花でも咲かせているんじゃないですか」<br />
「だといいけどな……っと！」<br />
　と、またしても高耶の足元がぐらついた。<br />
　今度は腕だけを掴んで支える。<br />
「わりぃ、わりぃ。この靴滑り易くって」<br />
「いっそのこと手でも繋ぎましょうか？」<br />
「ばか、それだとよけーに歩き難いんだよ」<br />
（そういう問題でもないのだが）<br />
　ポイントのずれた高耶のつっこみに苦笑いしていると、どうも滑ったのを笑われたと勘違いしたようで、高耶の矛先が急にこちらを向いた。<br />
「お前こそこんな日に革靴なんてご法度だろ。これだから都会育ちはな。お高い靴が汚れちまうぜ？」<br />
と言うからふたりして直江の足元に注目すると、まるで赤絨毯を歩いてきたかのように泥ひとつついていない。<br />
「コツがあるんですよ」<br />
「……あっそ。なんかつまんねぇ」<br />
　高耶は口を尖らせると、空から降ってくる雪を見上げた。<br />
「雪が積もって嬉しいのなんてガキだけだよなー」<br />
　そういいながら、高耶はさほど嫌そうには見えない。<br />
　美弥が雪だるま作りたいとか言いそうだなー、などと言いながら笑みを浮かべている。<br />
　何かいい思い出でもあるのだろうか。そのまま何も言わなくなる高耶の隣を、直江も黙って歩いた。<br />
　雪の中をふたりで歩いていると、様々なことを思い出す。<br />
　以前に景虎と降りしきる雪の中を歩いたのは一体いつのことだっただろうか。<br />
　彼の頭や肩に積もる雪がどうしても気になってしまって、自分の着ていたものを傘代わりにした記憶がある。<br />
　去年の雪の頃は、こうしてふたりで歩くことすら想像もしていなかった。<br />
「あ、やべえ。スポーツニュース始まっちまう」<br />
「ほら、急ぐとまた転びますよ」<br />
「そう何度もコケるかっての」<br />
　そう言っているそばから足元がぐらついている。<br />
　オレンジジュースで酔ってしまったのだろうか。<br />
　直江はいつでも手が出せるようひそかに身構える。<br />
　今年はきっとあと何度か高耶と雪を楽しむ機会が持てるだろう。<br />
　冷え込む外気と反比例するように、直江の胸の内は暖かくなった。<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
　　□　終わり　□ ]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%91%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Fri, 04 Dec 2009 11:09:41 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/11</guid>
  </item>
    <item>
    <title>１０</title>
    <description>
    <![CDATA[『今日は、福岡の友達のところへいく』<br />
　最初から老人は、今からどこへ行くだとか、どんな友人に会うのだとか、そういった話しかしなかった。<br />
　話しかけた高耶が何を訊いても、自分の話したいことしか話さないのだ。<br />
『一度も結婚はしなかったけど、今は弟夫婦と、とても立派な家に住んでいるんだ』<br />
　その友人の話を、自分のことのように嬉しそうに話している。<br />
　その表情やしぐさからは、本に込められていたような、じくじくと湿った感情はまるで感じない。<br />
　とても明るいものだった。<br />
『会うのはものすごく久しぶりなんだ』<br />
　先程直江が話をした息子のほうの西村によると、西村老人は全国各地を飛び回っているのだという。それだけいろんな場所に友人がいるというのも、少しうらやましい話だ。<br />
『そろそろ出発時間だ』<br />
　どこか息子に似た笑顔で、西村老人はそう言った。<br />
　今から松本空港の福岡便に乗るのだという。<br />
　直江が知る限りでは、もう福岡への便は無いはずだ。<br />
　ということは。<br />
「どんな飛行機で行くんだ？」<br />
　高耶も幽霊飛行機の出番だということに気付いたようだ。<br />
『白いやつだ。真っ白なやつ』<br />
　老人の顔が何故か自慢げに輝いた。<br />
「いや、色じゃなくて……」<br />
　説明しかけた高耶は、結局口をつぐんでしまった。<br />
　老人を見つめていると、わくわくしている気持ちがこちらまで伝わってくるようだ。<br />
　きっとそれが高耶にも伝染したに違いない。<br />
『間に合わなくなる、急がないと』<br />
　そう言っていなくなってしまった老人の、出立を見届けたいと言い出した。<br />
「空港まで行こうぜ。せっかくだから」<br />
　明らかに期待に満ちた顔で、高耶は直江にそう言ってきた。<br />
<br />
<br />
　空港に付いた頃には、もう陽が半分落ちかけている。<br />
　展望デッキにあがってみて、直江は息をのんだ。<br />
「すげえ……」<br />
　高耶も興奮気味に呟く。<br />
　老人が自慢気になるのもわかるような気がした<br />
　まるで雪でできたような真っ白な機体は、見たことも無いくらい大きなもので、流線型の滑らかな形をしている。その近未来的な巨大飛行機は、うっすらと透き通っていて、まだわずかに残っている雪が、夕ざしを反射してきらきらと輝いているのが機体越しに見通せた。それはまるで、機体が自体が光っているようにもみえる。<br />
「見物客呼んで、金とれるんじゃねーの」<br />
　フェンスに手をかけて身を乗り出した高耶は楽しそうにそう言った。<br />
「誰もがみられる訳ではないですから」<br />
　もちろん霊力のある人間でないと見られない。直江が窘めていると、程なくして機体が動き出した。<br />
　半透明のせいか、見ている限りではあまり重さを感じさせないが、それでもゆっくりじっくりと時間をかけて滑走路の端に移動した機体は、何かの合図を得たかのように、突然走り始めた。<br />
　とたんに、<br />
「ぎゃああ！すげー音！」<br />
　通常の何十倍もの離陸音があたりに響き始めて、慌てて耳を塞いだ。<br />
「西村老人の作り上げた霊障ですから、彼にとっての飛行機の印象というのがこういうものだったのでしょうね！」<br />
「はあ！？なんかいったか！？」<br />
　スペースシャトルの打ち上げでもここまでうるさくはないのではないか、というくらいの轟音が続き、しばらくは会話にならなかった。やがて飛び立って空のかなたに機体が消えた後も、耳がキンキンと鳴って痛かった。<br />
「確かにこれを深夜にやられたらつらいかもしれませんね」<br />
　霊力に違いがあるとはいえ、あの売店の女性も相当ストレスを感じていたに違いない。<br />
　高耶はまだ耳に違和感を覚えるのか、頭を振りながら飛行機の消え去った方角をみていた。<br />
「あれって、本当に博多にいくのか？」<br />
「どうでしょう。もしそうだとしたら、全国の着陸先で話題になっているかもしれませんね。軒猿への調査事項に入れておきましょうか」<br />
　怨将動向の報告書の中に、西村老人の動向が混ざって届いたら楽しいかもしれない。<br />
「帰ってくるところもみてみてーな」<br />
　高耶は無邪気にそう言った。<br />
「調伏、しなくていいんですか？」<br />
「したくない。気が済んだら、成仏するだろ」<br />
「そうですが」<br />
「けど、あの世で死んだ仲間と再会しちまったら、どうするんだろうな……」<br />
　高耶はしんみりと言った。<br />
　直江の中に"あの世"といった感覚はないが、高耶はその想像を膨らませているようだ。<br />
「例えばさ、絶対に日本が勝つって思って死んでった人とかにさ、責められたりしたらつらいよな」<br />
「………そうですね」<br />
　答えながら、直江は嫌悪感で胸がいっぱいになった。<br />
　敗者が他人を責めるなど見苦しい。<br />
　死んだことも敗けたことも自分の行動の結果であり、責任なのだと直江は思う。<br />
　どんな結果であれ、そうなった原因は全て自分自身の中にあるはずだ。<br />
「まあでも、勝ち負けって結果論だろ」<br />
　高耶が直江を振り返って言う。<br />
「戦争だと、ちょっと違うかもしんねーけど。例えば、陸上選手が走る前から自分の順位を恐がって逃げ出すわけにはいかないしな。きっと最後まで走り続けるしかない。結果がどうであれ、勝負から逃げださずに走ったことに、意味があるって思いたいよな」<br />
　直江は黙って頷いた。<br />
　最後まで、走り続ける。最期まで。<br />
　そのとき、自分と高耶の間にどんな結果がでるのだろうか。<br />
　なんにしても逃げるつもりはない。<br />
　そして敗けるつもりもない。<br />
　自分の勝利でレースを終える、その時まで。<br />
　ひたすら走り続けるしかないのだ。<br />
「直江」<br />
「………　はい？」<br />
「腹減った」<br />
　高耶の素直な物言いに思わず笑みが浮かんで、直江は暗い考えからしっかりと頭を切り替えることができた。<br />
「すっかり遅くなってしまいましたね。どこかこの近くで食事にしましょうか」<br />
「冗談、鉄板焼きが待ってんだろ。戻んぞ！」<br />
　本日一番の気合のこもった声を出して、高耶は風をきって歩き始めた。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%91%EF%BC%90</link>
    <pubDate>Fri, 04 Dec 2009 11:09:19 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/10</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０９</title>
    <description>
    <![CDATA[　生きながらの怨霊。<br />
　再度、庭に置かれたレプリカの前に立ってみて、高耶は西村の父親のことについてそう思った。<br />
　何かにとり憑かれたような執着が、彼の残した本から感じ取れる。<br />
　それは戦争そのものに対する想いだったのだろうか。死んでいった友人達へのものだったのだろうか。<br />
「その本、供養してあげたほうがいいかもしれませんね」<br />
「え？」<br />
「少し、念が篭りすぎているようです」<br />
　だからか、と高耶は納得がいった。<br />
「それって、何に対するものなのかわかるか？」<br />
「さあ、そこまでは。晴家ならわかるのかもしれませんが」<br />
　けれど、と直江は静かに言葉を続ける。<br />
「気持ちはわからないでもありません」<br />
「このじーさんの？」<br />
　高耶が本を持ち上げてみせた。<br />
「ええ。西村さんのお父さんにとっては、若い、いわば青春の時代に文字通り命をかけた出来事だったはずですから。人生を通してみたときに重要な出来事だったとしてもおかしくありません」<br />
「…………」<br />
　青春真っ只中の高耶には、いまいちピンとこない。<br />
「戦時中の話になると、体験者の人達は大抵、口がとても軽くなるか、とても重くなるかのどちらかであることが多いと思います。西村老人は前者のようでしたから」<br />
「話したがらない人は何でなんだ？」<br />
「………二度と思い出したくないような経験をしたということでしょうか」<br />
　そういわれて、高耶は気付く。そうか、直江は戦争を経験しているのだ。<br />
「おまえにとっては、どっちだったんだ」<br />
　直江は一瞬だけ、眼を瞠った。<br />
「私にとっては………どちらかといえば、後者ですね………」<br />
「………そっか」<br />
　直江が言いよどむから、それ以上は聞かずにおいたのだが、言い訳のように直江が付け足してきた。<br />
「当時、あの戦争にかかわらずにいられた日本人はいなかったと思いますよ」<br />
「…………」<br />
　高耶は紺色の表紙の、銀色の題字に触れた。<br />
「特攻って、敵に突っ込んでいくやつだろ。そんなんで、ほんとに勝てると死んだ奴らは信じてたのか」<br />
「有効な作戦だと思っていた人間は、軍部に限って言えば案外少なかったのかもしれませんね。反対意見もあったようですし。中にはもう連合軍には勝てないと悟って、それでも特攻任務を遂行した人もいたようです」<br />
「………え？なんで……」<br />
「そうですね………。敗者の意地というか」<br />
　直江は少し苦しげな表情になった。<br />
「自分の最期は、自分で決めたかったのかもしれません。勝者とは係わりのないところで」<br />
　意味が掴めないでいる高耶に、直江は更に言葉を続ける。<br />
「戦争が終わってしまえば連合軍側にどう扱われるかという不安があったのかもしれません。そうでなくとも国のため、家族のために死んでいく行為を名誉だと考えている人々は多かったと思いますけど」<br />
　高耶は納得がいかなかった。<br />
「………みんな自分のためだけに生きればよかったんだ。何かのために死ぬだなんて、そんなの」<br />
「死＝不幸とはみなされていなかったんですよ。まだ、自ら腹を切る人間すらいた時代ですから。潔いことが美徳とされた。たとえすり返られた大義名分でも、それを信じて死んでいけたのなら、きっと後悔はなかったでしょう」<br />
「すり返られた大義名分？」<br />
「誰もが人殺しを強要される世の中において、"国のため"や"人のため"は正当性のある立派な大義名分として受け入れられるということです」<br />
「みんな心の底からそう思ってたわけじゃないって意味か？」<br />
「………このことは、散々あなたともした話なんですが」<br />
　直江は少し硬い表情で口を開く。<br />
「本来、人はそれぞれの夢や目標を持って生きていくはずです。けれど突然、他人を殺さなければ自分が死んでしまうという状況に放り出されてしまった。夢や目標などとはもう言っていられません。しかも、人の命を奪うという行為に、人は思う以上にストレスを感じます。正当性がなくては躊躇ってしまう。だから、生き延びるために大義名分に頼らざるを得なかった、と」  <br />
「軍が、国がそう仕向けたってことか」<br />
「誰かのせいとは言い切れません。望む望まないにかかわらず、たくさんの人間が皆、"何か"のために一丸となって戦う。それが戦争です。後になって考えれば、回避も出来たかもしれない。命をかけるようなことではなかったと思うこともあるかもしれない。でも当時は、命をかけてこそ、でした」<br />
「……………」<br />
　大義名分とか何とかはよくわからないが、自分を救ってくれる何かに頼ってしまいたくなる気持ちはよくわかる。例えそれが、正しいことかどうかわからなくても。<br />
　高耶は直江をみた。<br />
　軽く俯いたその表情は、相変わらず硬い。当時のことを思い返しているのだろうか。<br />
　高耶の中には、未だ警鐘が鳴り続けていた。<br />
　この男に甘えては駄目だ、この男だけは駄目だ、と頭の隅の方からいつも何者かが訴えてくる。<br />
　だけど。<br />
　教室を出た頃の暗い気持ちはもうすっかり消えていた。あの重苦しかった心がすっかり軽くなっている。直江はいつも、高耶の心を軽くしてくれる。そういうものにすがりつきたくなるのは当然じゃないか。<br />
（もしかしたら）<br />
　高耶に絡んできた今朝のヤツらやあの暴言教師は、高耶を傷つけることによって苦しみが軽くなるような作用が心に働くのかもしれない。高耶を貶めたいと思う気持ちに抗えないのかもしれない。それが真実ならかなり迷惑な話だけれど。<br />
　哀れだな、と高耶は思った。<br />
（オレなんかに拘ったって、何もならないのに）<br />
　きっと何の意味も持たない行為だ。今度会ったら、そう言ってやろう。もっと、有意義なことをしろ、と。<br />
　そんなことを考えていたら、直江がじっとこちらを見ていた。<br />
　その視線に気付いた高耶は、その場を繕うに言った。<br />
「やっぱり殺し合いなんて無意味だって思う。どんな理由があったとしても。けどさ」<br />
　風にあおられた前髪がくすぐったくてかきあげる。<br />
「《調伏》だって武力行使だろ。人のことなんて言えない」<br />
「私達の相手は死者ですから。生きた人間ではありません」<br />
「でも、解決方法としては一緒だ。紛れもない、チカラづくってやつだ」<br />
「そうですね。………ならばせめて、自分たちの争いごと………《闇戦国》においてだけは、あれほどの犠牲者を出すのは避けたいですね」<br />
「………ああ」<br />
　もう一度紺色の表紙を開こうとして何かの気配に気付いた高耶は、ハッと顔をあげた。<br />
「直江」<br />
　機体の日の丸の脇に、見知らぬ老人の霊が立っている。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%99</link>
    <pubDate>Fri, 27 Nov 2009 10:01:55 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/9</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０８</title>
    <description>
    <![CDATA[　教えて貰った住所へ着いてみると、かなり広い庭のある立派な家が建っていた。<br />
　それだけなら特に変に思ったりはしないのだが。<br />
「ミサイル……じゃねーよなあ？」<br />
　庭の片隅に、いやに丸っこいフォルムの飛行機もどきが置かれていた。子供向けの遊具のようにも見えなくはないが、それにしてはしっかり作りこんである。<br />
　近寄ってみると、その胴体部分には「日の丸」が描かれていた。<br />
「これは………」<br />
　心当たりがあるらしい直江はしばらく考えていたが、<br />
「とりあえず、話を伺ってみましょう」<br />
と言って玄関へと高耶を促した。<br />
　チャイムを押して出てきたこの家の奥さんに偽の名刺を渡しつつ、航空関係の雑誌記者などを適当に名乗って家に上がりこんだ二人は、在宅業だというその家の主人に話を聞くことができた。<br />
「あの戦闘機の話ですね」<br />
　外国語の本がずらりと並ぶ応接室に通されて、温和そうな西村はすぐに口を開いた。<br />
「あれは父が作らせたもので……、実は父は戦時中、特攻志願をした人だったんですよ」<br />
「特攻……」<br />
　思わず復唱してしまう高耶の横で、予想していたらしい直江は深く頷いて言った。<br />
「では、やはり庭のあの機体は」<br />
「ああ、ご存知ですか。そうです、あれは旧帝国海軍の特攻兵器なんです」<br />
　もちろんレプリカですが、と西村は言う。<br />
「父は当時を忘れないようにという意味で作ったようなんですが、さすがにオブジェとしてもあまり縁起のいいものではないですからね。当初は散々反対したんですよ」<br />
　笑いながら言うところをみると、今はさほど厭に思ってはいないようだ。<br />
「父が亡くなったからといって勝手に処分してしまうのも気が引けますし、どこか博物館のようなところで引き取り手がないか探しているところなんです」<br />
　どんどん話が進んでいってしまうから、高耶は小声で直江に尋ねた。<br />
「特攻兵器って？」<br />
「知りませんか」<br />
　見当もつかないから、頷くしかない。<br />
「あれは特攻専用に作られた乗り物なんだよ」<br />
　西村が高耶に向かっていった。<br />
「特攻……専用？」<br />
「そう。あれに乗って突撃するんだよ。若い人にはもう、なじみがない話だよねえ」<br />
「………すいません」<br />
　なんだか知らない自分が悪い気がして、高耶は思わず謝った。<br />
「いやいや」<br />
　西村は顔の前で手を横に振った。　<br />
「お父様の話を聞かせてもらえますか」<br />
「父ですか。父は……まあ、歳を取ってからは特にね、戦争の話が多くなりましたね。そういう人だと言えばわかりますか？」<br />
「……ええ」<br />
　直江は頷いているが、高耶にはやっぱりよくわからない。<br />
「戦後も相当苦労したはずだし、こつこつと努力をしてきた人だったんだけどね。そういう話は殆どしなかったなあ。いつも軍にいた頃の話ばかりで」<br />
　西村は上に向けていた視線を下げて、笑った。<br />
「ただおかげで旅行をよくしてね。全国にいる元特攻だって人を訪ねては、当時の話なんかを聞いて、そうだ、本までだしたんですよ」<br />
　立ち上がった西村は、洋書ばかりの本棚から紺色の古びた本を取り出した。<br />
　手渡された高耶は、パラパラと頁をめくってみる。<br />
「実はここへ来る前、松本空港の方へ寄ってきたんです。そこで同級生の方に聞いたんですが、何でもお父さまが夢枕に立たれたそうですね」<br />
「ああそう、そうなんです。リカちゃんにきいたのかな」<br />
　あの女性はリカちゃんというらしい。<br />
「その、飛行機で移動しているという話を詳しく聞きたいんですが<span class="line">───</span>」<br />
　直江と西村の話は続いていたが、高耶の頭には入ってこなかった。<br />
　本に書いてある手記に集中してしまっている。そこには、初めて聞くような話ばかりが載っていた。<br />
　戦争のことについて、高耶は学校でならったことくらいしか知らない。身近に戦争経験者がいなかったせいだ。<br />
「高耶さん」<br />
「………え？」<br />
「そろそろお暇しましょうか」<br />
「ああ」<br />
　二人の話は済んだらしい。高耶は慌てて本を閉じた。<br />
「よかったらそれ、持っていってください」<br />
　西村が高耶の持つ本を示して言う。<br />
「でも」<br />
「いいんです。父も、若い人にこそ読んでもらいたかったはずですから」<br />
「……じゃあ、いただきます」<br />
「はい、どうぞ」<br />
　部屋を出て玄関へ向かう途中、西村が高耶に話しかけてきた。<br />
「不思議だなあと思うでしょう、その本に出てくる人たちのこと」<br />
「え？」<br />
「私も若い頃はわからなかったんだよね。どうして父がここまであの戦争に拘るのか。もう終わった話をいつまでもひきずるのかってね」<br />
　高耶は何も言えず黙ってしまった。<br />
　もちろん辛い体験だったからこそ、後世に残したいという気持ちはあるだろうが、そういう使命感以外のものが、この本にはあるような気が、高耶にもしていた。<br />
　情熱のような、怨念のような……。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%98</link>
    <pubDate>Fri, 20 Nov 2009 11:02:55 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/8</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０７</title>
    <description>
    <![CDATA[　帰途に着く前に、ふたりはもう一度売店を訪れることになった。<br />
　飛行機の離陸音が聞こえてしまうという女性に会うためだ。<br />
「あら、記者さん。何かわかった？」<br />
　売店用のユニフォームを来た40代くらいの女性は、直江をみてにこやかに対応してくれた。<br />
「実はこれをお渡ししようと思いまして。ちょっと手を出して頂けますか」<br />
　直江が女性の手に乗せたのは、調達したばかりの"耳栓"だ。<br />
　女性が疑問を口にする前に、直江は女性の手を耳栓ごと握り締めた。<br />
「あらあら……」<br />
　女性は戸惑いながら直江を見上げる。<br />
「私の目を見ていてください」<br />
　言われるがままの女性と視線を合わせて、直江はじっと集中する。<br />
　すると、女性の表情が一瞬にして虚ろになった。暗示状態に陥ったためだ。<br />
　直江は耳栓を使用している間だけ、一時的に霊力を封じ込める暗示をかけた。<br />
　これは慢性的に暗示状態にあると精神を圧迫してしまうことを考慮して、高耶が提案した対策法だ。<br />
「もう大丈夫ですよ」<br />
　直江がそう声をかけると、女性がはっと我に返る。<br />
「あら、今私………？」<br />
「もし次に音が聞こえた時は、これをつけて眠ってみてください。きっと何の音もしないはずです」<br />
「……本当に？すごい音なのよ？今までいろんな方法を試したけど、どれも駄目だったのよ？」<br />
　当たり前だが半信半疑になる女性に、直江は頷いてみせる。<br />
「騙されたと思って試してみてください」<br />
「………そうね。騙されたと思ってね」<br />
　まだ信じていない様子の女性は軽い調子で頷き返すと、それより、と話を続けた。<br />
「聞いといてもらいたいことがあるのよ。ついこの間、小学校の同級会があったんだけど」<br />
「はあ」<br />
　既に離れていた直江の手を、がしっと掴みなおしてくる。<br />
　その積極性に高耶は多少引き気味だ。<br />
「その時に、同級生のお父さまがつい先日亡くなったっていう話を聞いたのね」<br />
「ええ」<br />
　なんだか全然関係なさそうな話なのに、直江は最後まで聞くつもりのようだ。<br />
「その人、西村くんっていうんだけどね。どうも亡くなったお父さまがしょっちゅう夢枕に立つらしいのよ。それだけでもちょっと怖いんだけどね、なんでもそのお父さまが全国のお友達の家を訪ね歩いてて、その報告に来るんですって」<br />
「報告ですか」<br />
「そうなの。誰々と一緒にそうめんを食べただとか、誰々と一緒にどんな映画を観ただとかね。で、不思議に思った西村くんが話に出てきたお父様のご友人に電話をかけて確認してみると、確かにお昼ご飯がおそうめんだったり、見ていた映画のDVDのタイトルが一致したりするそうなのよ」<br />
「それは怖いですねえ」<br />
「それがね、それだけじゃないのよ。幽霊だから、空をふわ～って飛んでいくんじゃないかと思うじゃない？」<br />
「違うんですか」<br />
「違うの。どうやら飛行機に乗って行ってる、って仰ったらしいのよ」<br />
　それを聞いて、ぴく、と高耶が反応する。<br />
「だからね、最近は出勤する度に、もしかしたらそこらへんですれ違うんじゃないかって、びくびくしちゃって」<br />
「なるほど」<br />
「今回は幽霊特集なんでしょう？もし、霊媒師さんを呼ぶなんてことになったら、そっちもお願いしたくって」<br />
「………はい？」<br />
「ほら、よくやってるじゃない。テレビで霊能者呼んでお祓いとかなんとか」<br />
　どうやらワイドショーか何かと勘違いしているらしい。<br />
「ああ、我々はテレビの取材ではないんですよ」<br />
「あら、そうなの？あなた、レポーターさんじゃないの？そういえばカメラ、見当たらないものねえ」<br />
　その後も、女性のご近所ネタを何件か聞いてやった後で、西村という同級生の住所を教えてもらうことができた。<br />
「行ってみますか」<br />
　直江が声をかけると、何かの勘が働いた高耶は、<br />
「ああ」<br />
と迷いなく頷いた。<br />
<br />
<br />
「手ぇ握る必要なかっただろ」<br />
「はい？」<br />
　教えてもらった住所に向かう途中の車内で高耶が話しかけてきた言葉の意味がわからなくて、直江は首を傾げた。<br />
「さっきの、暗示んとき」<br />
「ああ」<br />
　直江が暗示の際に女性の手を握ったことを言っているらしい。<br />
　まさか、妬いているということはないだろうから、<br />
「………もしかして、うらやましかったですか」<br />
　高耶は以外に熟女好きなのだろうか？<br />
「ちげえって」<br />
　即座に否定した高耶は、<br />
「おまえの本質をみたってゆーか、真髄をみたってゆーかさ」<br />
　感心してんだよ、と腕を組む。<br />
「普段、おまえがどんな風に女の人と接してるのかを垣間見た気がした」<br />
「檀家さんにはあれくらいの年頃の女性も多いですから」<br />
「にしても扱い慣れすぎ」<br />
　高耶の直江を見る眼が心なしか冷たい。なんだか"熟女たらし"のレッテルを貼られたようだ。<br />
　若い女性の手をいやらしく握ったわけでもなし、いいじゃないかと直江は思う。<br />
「弟子入りしますか、私に。そうしたら長年の研究の結果、独自に編み出した秘蔵テクニックを教えてあげてもいいですけども」<br />
　直江は高耶のほうをみた。　<br />
「あなたにその素質はなさそうですね」<br />
「………あるって言われても嬉しくねーし」<br />
 　高耶は本当に嬉しくなさそうな顔で言う。<br />
「敵意を持たれるより、好意を持たれたほうが暗示はかけやすいんですよ」<br />
　そう言って、直江は強制的に話を終わらせたが、<br />
「ほんとかよ」<br />
　高耶の顔は変わらず不審そうだ。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%97</link>
    <pubDate>Fri, 20 Nov 2009 10:55:38 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/7</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０６</title>
    <description>
    <![CDATA[「飛行機の憑喪神？」<br />
　直江が言うには、何でも飛行場に夜な夜な現れる飛行機の幽霊がいるらしい。<br />
「まあ、そうなりますかね」<br />
　勝手に離発着するジェット機があるというのだ。<br />
　直江も戦時中墜落した戦闘機が飛行する霊障なんていうのは聞いたことがあるらしいが、ジェット機というのは初めてだそうだ。<br />
「そいつがなんか悪さをしてるわけ？人を乗せて飛び立って、そのまま帰ってこないとか」<br />
「いえ、まだそこまで具体的にわかってはいません。そういう現象があるというだけで」<br />
「そっか」<br />
　人的被害がないと聞いて、高耶は内心気が抜けてしまった。<br />
（こんなの、軒猿の仕事だよな）<br />
　でなきゃ千秋にでも任せればいいのに。直江がわざわざ宇都宮から来ることもない。<br />
　なんとなく、直江の行動の裏に意図を感じつつも、<br />
（まあいっか）<br />
　高耶は無理やり納得した。<br />
　パーキングエリアを見に行ったついでなのだろうし。自分はウマい飯が食えるわけだし。<br />
　それにその勝手に飛び回っているジェット機の陰には、また苦しんでいる魂があるのかもしれない。<br />
　なら、自分が行く意味はある。できる限りのことをしよう。<br />
　そう考えながらもあまりに暖かい車内でうとうとし始めたところで、もう空港に着いてしまった。<br />
　実は来たことがなかったのだ高耶は、思った以上に近くてびっくりだ。<br />
「ここかあ」<br />
　山間とは思えないようなだだっ広い平地がそこには広がっていた。<br />
　空港だから当たり前なのだが、併設されている公園設備が更に開放感を感じさせる。<br />
　溶けきらない雪が、まだあちらこちらに残っていた。<br />
　平日の午後であるせいか、人の姿も殆ど見えない。<br />
　冷たい風がびゅうびゅうと吹き抜けていく。<br />
　寒いな、と思うより早く、直江が自分の上着を高耶の肩にかけてきて、更にその風から庇うようにして立った。<br />
「まずは聞き込みですね。いきましょう」<br />
　直江のそういう行為にすっかり慣れきってしまった高耶は、まるでそれが当たり前のような顔でターミナルビルへと入っていった。<br />
<br />
<br />
「景虎様」<br />
　飲食店のほうを聞き込んできた直江が、足早に戻ってきた。<br />
　ビル内に入ってからは二手に分かれて、例によって雑誌記者などを名乗って聞き込んでまわってみたのだが。<br />
「どうでした」<br />
「駄目だな」<br />
　引退したジェット機の幽霊らしい、とか、夜中に離発着する大きな音が聞こえるらしい、とかあいまいな噂話は聞けたが、肝心の目撃証言は得られなかった。<br />
「その離発着の音をきいたというのは、どうやら売店の女性のようですね」<br />
　家が近所の彼女は、たまに夜中に大きな音が聞こえるのだと言っていたそうだ。<br />
　しかし彼女がその音を訴えても、家族や近所の人間にはまるで聞こえないのだという。<br />
「少し、霊力の強い方のようでした」<br />
　その力を敏感に察した雑霊や何かが、彼女に数体くっついていたそうだ。<br />
　けれど、彼女にしてみても被害といったらせいぜいその音のせいで寝不足になるということくらいのようだ。<br />
「後は、滑走路の霊査ができりゃあな」<br />
　さすがに雑誌記者の肩書きではそこまで入り込めないから暗示を使っての潜入となる。<br />
　しかし、高耶はそこまでする必要がないと思った。<br />
「被害がねえのに、わざわざそこまでしなくてもいいだろ。こんだけ近いんだし、もし何かあればオレと千秋とでまた来るさ」<br />
「そうですね」<br />
　直江もそれで納得したようだ。<br />
「では、今日のところは戻りましょうか」<br />
　結局直江の予想通り、早めの夕飯となりそうだった。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%96</link>
    <pubDate>Fri, 13 Nov 2009 10:19:07 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/6</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０５</title>
    <description>
    <![CDATA[　青白かった高耶の顔色は、車内に入っていくらか血色が良くなった。<br />
　先程まで心にあったものは、忘れてしまったのか、うまく折り合いつけられたのか、すっかり元の調子を取り戻したようだ。<br />
　怪我のいきさつをなんとなく聞かされて、直江は高耶がここらあたりでは本当に伝説的な存在になっているのだな、と改めて思った。<br />
　それも当然だと思う。<br />
　景虎とはいつ、どこにいたってそうなのだ。憎たらしいくらいに彼らしい。<br />
「なあ、どこ向かってんだ」<br />
　思考が沈みかけていた直江は、高耶に問われて我に帰った。<br />
「バイト、お休みなんでしょう？付き合って欲しいところがあるんです」<br />
「いいけど。なんでバイトねえって知ってるんだよ」<br />
「スタンドに寄ってきたからですよ」<br />
　ここに来る前、給油ついでに今日は高耶が出勤かどうかを尋ねてきたのだ。<br />
「主任さん、出来の悪い"従兄弟"がお世話になっているからと差し入れをしたら、来週の予定まで教えてくれましたよ。ずいぶん長々と話し込んでしまいました」<br />
　お仕事の邪魔だったかもしれませんねぇ、と直江はうそぶく。<br />
「主任のやつ……」<br />
　当たり前かもしれないが、車にもバイクにも詳しいバイト先の上司を、高耶は敬愛しているようだった。が、あのお喋り好きだけは頂けないらしい。まあ、その人懐っこさがあのＧＳの明るい雰囲気をつくり上げているのだが。<br />
「そういえばスタンドに寄る前に、例の祠とパーキングエリアにも寄って来たんですよ」<br />
「………ああ、あの？」<br />
　以前にあった交通事故絡みの事件で舞台となった場所のことだ。高耶はあれ以来、足を運ぶことはなかったが。<br />
「ええ。雑木林の方は、あのあと急激に植物の勢いが衰えたとかで、随分と乾いた空気になっていましたよ。それから、サービスエリアの祠には例の白いアネモネが供えてありました」<br />
「そっか………。仲良くやってんのかな」<br />
「彼らなら、大丈夫でしょう」<br />
「………ああ」<br />
　また、あの時のことを思い出して沈んでしまうかと思われた高耶だったが、意外にしっかりとしていて、すぐに話題を切り替えてきた。<br />
「で、今日はどこいくわけ」<br />
　高耶も、精神的に随分成長したということだろうか。<br />
「実は最近、松本空港で変わった霊象が目撃されていまして」<br />
「ふんふん、空港ねぇ」<br />
　何かと理由をつけては松本へやってくる直江に最初はぎゃあぎゃあ言っていた高耶ももう何とも思ってないようだ。それはそれで多少寂しい。<br />
「………そんで、終わったらどうする？夕めしは？食ってく？」<br />
　それどころか最近では付き合えばタダで飯を食わせてくれるお兄さん（？）扱いである。まあそれはそれでまた、多少嬉しい。<br />
「今からだと夕飯を食べ終える頃にはかなり遅くなってしまいそうですね。美弥さんは大丈夫なんですか」<br />
「今日は女友達とデートだとか言ってたから」<br />
「そうですか。それでは……甲府の方で懇意にしている店のオーナーが、松本駅の近くに新たに出店したそうなので覗いてみましょうか」<br />
「へぇ、何の店？」<br />
「いわゆる鉄板焼きですね。肉から魚介、旬の野菜までなんでもありますよ」<br />
「……いいね」<br />
　直江に向かってニヤリと笑ってみせる。こういうときの高耶は仕事が速い。夕飯食べたさに霊感も冴え渡り、あっという間に原因も判明するだろう。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%95</link>
    <pubDate>Fri, 13 Nov 2009 10:13:32 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/5</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０４</title>
    <description>
    <![CDATA[（くそっ……）<br />
　ただでさえイラついていたというのに、しまいにはあの教師だ。<br />
　たぶん世の中にはどうしようもない人間ばかりで、思いやりを持つ人間なんていうのは奇跡に近いのではないだろうか。<br />
　自分のモノサシでしか人を見ることが出来ない人間たち。そのモノサシがどれだけ歪んでいて非常識なものなのか、振り返ることもしない。<br />
　それとも、自分が間違っているのだろうか。<br />
　人のことなど考えずに、自分のことだけを考えて生きることが正解なのだろうか。<br />
　オレも自分のモノサシを、他人に押し付けているだけなのだろうか。<br />
（寒い……）<br />
　冷たい風が吹き抜けていく。<br />
　上着を教室に置いてきたせいだけでなく、心が酷く寒かった。<br />
「<span class="line">───</span>こらっ」<br />
　不意に背後から聞こえてきた声に、反射的にびくっと身体を揺らす。ただ歩道を歩いていただけで、別に悪いことをしているわけではないのに。習慣とは恐ろしいものだ。<br />
　恐る恐る振り返って、そこにあったのは、<br />
「直江……。なにやってんだよこんなとこで」<br />
　思わずぽかんとする高耶を見下ろす、よく見慣れた顔だった。<br />
「あなたこそまだ授業の時間でしょう？サボタージュですか」<br />
「……いいだろ、別に」<br />
　驚きで一瞬消えていた感情を、また思い出してしまう。<br />
　俯いてしまう高耶の顔を覗き込むようにして、直江が首をかしげた。<br />
「怪我、してますね」<br />
　直江が自分の口のところを指差す。<br />
「こんなの怪我のうちにはいんねーよ」<br />
　高耶は口元をゴシゴシと擦る。<br />
「舐めてあげましょうか？」<br />
　直江はいたずらっ子のような瞳で言った。<br />
　不意に高耶の脳裏に幼い頃の記憶が蘇る。紙で切った自分の指を、舐めてくれた母親の姿。<br />
「………お前はオレの親父かよ」<br />
　へそを曲げたように言ったら、　<br />
「それはちょっと、傷つきますよ」<br />
　いくら年の差があるとはいえ、さすがの直江も父親扱いされる歳ではない。<br />
　見るからにしょげる直江をみて、高耶は思わず吹き出した。<br />
　高耶に笑顔が戻って安心したのだろうか。<br />
　直江も笑みを浮かべて言う。<br />
「あなたを迎えに来たんです。早めに来て正解でしたね、入れ違うところでした」<br />
　いきましょう、と車へと促されて気付く。<br />
　直江の愛車は、随分と離れた場所に停められていた。<br />
　あそこで待っていたはずの直江は、自分の姿を見つけてずっと後を追ってきていたのだろうか。<br />
　普通じゃない様子の高耶に、なんて声を掛けるべきか、悩みながら？<br />
「……………」<br />
　気を、使わせてしまったのかもしれない。<br />
　もうすっかり慣れたウィンダムの助手席に乗り込むと、車内はとても暖かかった。<br />
　隣に座る直江を見ながら、高耶は思う。<br />
　直江が傍らにいることは、日常よりも身体に馴染む、と。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%94</link>
    <pubDate>Fri, 06 Nov 2009 11:51:07 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/4</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０３</title>
    <description>
    <![CDATA[　６時限目が始まっても高耶は不貞寝を決め込んでいる。<br />
　そして、事件は起きてしまった。<br />
　出席を取り始めた教師が、高耶のその態度にキレたのだ。<br />
　以前から高耶とは折り合いの悪かった教師だ。<br />
「仰木。………仰木！返事くらいしないか！」<br />
　まずは寝ている高耶の頭頂部に、いきなり出席簿を叩きつけた。<br />
「……ぁあ？」<br />
　殴られて起こされた高耶はますます機嫌が悪い。  <br />
「呼ばれたら返事をするなんて、猿でも出来るぞ、猿でも！」<br />
　そう言って怒鳴りつけた教師は、顔を上げた高耶のケンカ傷に気付いたらしい。<br />
「なんだ、その傷は。揉め事でも起こしたんじゃないだろうな！」<br />
　高耶はくだらない、とばかりに顔を背けてしまった。無視を決め込むつもりのようだ。<br />
　そこへ教師が信じられない一言を放った。<br />
「ああ、アル中の父親に殴られでもしたか」<br />
「なっ！！！」<br />
　あまりにひどいと譲が抗議する前に、猛然と高耶が立ち上がった。勢いで椅子が横に転がる。<br />
　拳を握り、ものすごい勢いで睨みつけてくる高耶に、教師は若干ひるみつつ、それでもまだ口を閉じない。<br />
「な、なんだ、殴るのかっ。やっぱり、カエルの子はカエルだなっ」<br />
「……………」<br />
　憎憎しげに教師を睨んでいた高耶は、そのまま何も言わずに教室の出口へと歩き出した。<br />
「高耶っ」<br />
　立ち上がって後を追おうとした譲はその場で立ち止まる。<br />
　高耶の背中が後を追われることを拒絶していた。こういう時の高耶は何を言っても駄目だと譲は知っている。<br />
（高耶………）<br />
　唇を噛む譲の耳に、ひどすぎるよ、と小さな声が聞こえてきた。見れば沙織が首を振りながら呟いている。千秋も、矢崎も、皆苦虫を噛み潰したような顔だ。<br />
「ったく。どうしようもないな、仰木は。成田、座りなさい。授業を始めるぞ」<br />
　そう言いながら教壇へ戻っていく教師は、生徒全員から注がれる軽蔑の視線に気付くことはない。<br />
　譲は、高耶の握った拳の白さが、いつまで経っても頭から離れなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
　　くだらないくだらないくだらない……<br />
　高耶は心の中で呪文のようにその言葉を唱えていた。<br />
　怒りと悲しみと諦めとが波となって、交互に押し寄せてくる。<br />
　その波を静めるように。<br />
　　くだらないくだらないくだらない……<br />
　高耶はいつも通りに朝起きて、いつも通りに家を出ただけだったのだ。<br />
　ああ、バイクが使えなくてだりぃ、とか、でも今日はバイトがない日で逆にラッキーだったか？、とか、そんなことを考えながら、歩いていたのだ。<br />
　それなのに。<br />
　家を出て少しも経たない内に、３人の他校生が自分を囲んできた。<br />
　明らかに高耶の家を調べてやってきたそいつらは、何故か美弥の名前を出してきて、美弥の学校もクラスも知っているからいつでも手をだせるのだ、というようなことをいいだした。それで、思わずキレてしまったのだ。<br />
　別にケンカが好きな訳じゃない。父親に殴られていた時期もあった高耶だ。昔はそれでもスカッとする、とか思っていたものだが、最近《調伏》活動をするようになって、暴力の非情さを思い知った。出来れば争い事など避けて通りたい。<br />
　けれど、世間はそうさせてくれないのだ。<br />
　自分の思うようには、自分を見てくれない。<br />
　自分の考えるようには、物事を捉えてくれない。<br />
　そう言う人間は、自分の言葉を言葉どおりにすら受け取ってくれない。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Fri, 06 Nov 2009 11:50:49 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/3</guid>
  </item>
    <item>
    <title>０２</title>
    <description>
    <![CDATA[　11月も半ばを過ぎ、朝晩はめっきり冷え込むことの多くなった長野県松本市では、昨夜遅くにとうとう初雪が観測された。<br />
　日付だけで言えば例年通りなのだが、近隣の地域に比べ積雪量の少ない松本にはめずらしく、朝方まで降り続けた雪が十数センチ降り積もり、朝の日差しのせいで登校路は最悪の状況になっていた。<br />
「ぎゃあ～コケるうう～！！」<br />
「ちょっとぉ、サイアクぅ！！」<br />
　雪が溶けたものと溶けきらないものとさらに轍の泥まで混ざって、異様に滑りやすくなっている。<br />
　もちろん、凍りついてしまうよりは随分マシだが。<br />
「なりたく～うん！」<br />
　森野沙織の大きな声が聞こえてきて、譲は背後を振り返った。<br />
「あ、森野さん、おはよう」<br />
「道路、ひどいねえ～ってあああ！成田くん！ズボンの裾が濡れちゃってるよ！」<br />
「あ、ほんとだ。やだなあ～」<br />
　顔をしかめてみせる譲をみて、そんな顔もかっこいい！と沙織は瞳を輝かせるが、もちろん譲はそんなことには気付かない。そうこうしているうちに、沙織に負けない大声が近付いてきた。<br />
「若者ども！備えが甘いなあ！」<br />
　見れば千秋が、ぴかぴかの長靴を自慢げにみせつけながらこちらに歩いてくる。<br />
「やだ、千秋くん、それってちょっとイケてない」<br />
「だっておれの大事なお靴ちゃんたちを汚す訳にゃあいかねーもん」<br />
　千秋は口を尖らせながらそう言うが、にしても似合わない。<br />
「帰るときには溶けてるかもしれないのに」<br />
　譲が突っ込むと、<br />
「あ、ちゃんとスニーカーも持参です」<br />
と、いつもより膨らんだカバンを叩いて見せた。<br />
「ねね、それより今日、こないだの抜き打ちテスト、返って来るよね！千秋くん、出来どうだった？」<br />
「あ～俺？俺はその～、受けてねえっつーか、なんつーか」<br />
「あれ？千秋くんあの日お休みだったっけ」<br />
「う～ん、休みっつーかなんつーか」<br />
「ほら、千秋って忘れっぽいから」<br />
　いつもの通り、他愛の無い会話を交わしながら校門をくぐる。<br />
　なんだか雪に気を取られてゆっくり歩きすぎたせいなのだろうか。教室に入ってすぐ始業のチャイムがなったもので、三人は慌てて席へと着いた。<br />
　ところが譲のひとつ前の席、仰木高耶の席は空のままだ。<br />
「高耶は？」<br />
　すぐそばに座る矢崎へと声をかけると、<br />
「まだきてねーよ。ま、いつものことだけど」<br />
と、答えが返ってきた。<br />
「雪のせいでバイクに乗れないから遅いんじゃないかな」<br />
　そう言いながら、既に何かあったのではないかと心配になってきている自分がいる。本当に苦労症だな、と苦々しく思いながら教科書を開いた。<br />
　けれど、譲のその心配は見事に的中してしまったのだ。<br />
　一時間目も終わりの頃になって。<br />
「高耶！」<br />
　高耶はこめかみと口元に傷を作って登校してきた。手も指の付け根のあたりが赤く腫れている。明らかにケンカで出来た傷だ。<br />
「大丈夫？」<br />
　小声で問いかけながら、また素行を注意するだのなんだの理由をつけて教師に呼び出しをくらうのではないかと心配する譲をよそに、教壇に立っていた気の弱い教師はちょっと注意しただけで済ませてしまった。<br />
　それどころか終業のチャイムが鳴ると同時に、トラブルはごめんだというように慌てて教室を出て行く。<br />
　それはそれでふがいない、と思う譲だ。<br />
「よっ、大将！おっとこまえっ」<br />
　教師が出て行くなり、すぐに千秋が茶化しにやってくる。<br />
「うられたもん、かわねーわけにはいかねーだろ」<br />
　高耶は若干、ふてくされているようだ。<br />
「んで、勝ったんだろうな」<br />
「当たり前」<br />
「もう！ケンカはしないって約束だろ！」<br />
　全然反省の色の見えない高耶に、譲は本気で怒りたくなった。<br />
「しょーがねーだろ。こっちはそーゆーことから卒業したつもりでいても、いちゃもんつけてくる奴らがいんだから。怒るんならそいつらを怒ってくれ」<br />
　そう言うと、ぷいと横を向いてしまう。<br />
「何かやなこと言われたの？」<br />
「……んなんじゃねーよ」<br />
「傷は大丈夫？保健室行く？」<br />
「いーよ。舐めときゃなおる」<br />
　世話を焼く譲を見て、千秋は腕組みしながらニヤついている。<br />
「ほんっと、直江といい勝負だよな」<br />
　それを聞いて、何故か高耶が千秋を睨んだ。<br />
「どーゆー意味だよ」<br />
「直江も成田も、クソガキを甘やかしすぎだってこと」<br />
「は？」<br />
　千秋の一言で高耶はますますへそをまげてしまったようだ。<br />
「オレはクソガキでも甘やかされてもねーよ」<br />
　結局そのままずっと、高耶の機嫌が直ることはなかった。]]>
    </description>
    <category>白銀の翼</category>
    <link>http://siroganenotubasa.blog.shinobi.jp/%E7%99%BD%E9%8A%80%E3%81%AE%E7%BF%BC/%EF%BC%90%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Fri, 06 Nov 2009 11:50:29 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">siroganenotubasa.blog.shinobi.jp://entry/2</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>